大三国志 疾風迅雷史 002 宴
徐目の儀が終わり、夕暮れ時。中庭では宴の仕度が整い、諸侯はそれぞれの席で宴の始まりを待つ。
『王』の官位を得た諸葛均が宴の始まりを告げると、中庭の部隊に踊り子が集まり妖艶な舞を踊り始める。
孔は香麗の右側に、諸葛均は左側の席へと座る。
「孔よ、どうじゃ魁の舞踊は?」
「なかなか妖艶で見惚れてしまいます。」
「そうであろう。・・・孔よ。酒が進んでおらぬが口に合わぬか?」
「これは申し訳ありませぬ。私、下戸でして酒の方は・・・。」
「そうか、それは失礼した。では茶はどうじゃ?」
「黄山毛峰という名山黄山特産の緑茶 じゃ、漢の十選には入る名茶よ。」
「なんと!?私茶には目が無い故。是非ともいただきたい。」
「そうか、それはよかった。給仕、孔に黄山毛峰を持って参れ。」
香麗は少し間を置いて、話を変える。
「ところで、孔よ。其方に相談があるのじゃが、よかろうか?」
「そうですか。お聞きしましょう。」
「孔は魁の妾を含めて周辺諸侯領土をどう思う?」
「まだまだ、発展の余地はあるかと。」
「というと具体的には?」
「具体敵にですか・・・。香麗殿にも関することなので言い辛い部分も・・・。」
「よいよい、無礼は許す。申してみよ。」
「我々の領土は漢から自治権を奪って成り立っているわけですが、資源地には序列があります。鉱山にしても多くの鉄を採取することが出来る場所もあれば、少ない採取量のところもあります。木、石、食料然り。我々のすべきことはより多くの産出量を生み出す土地の自治権を確保することにこそ繁栄が見えるのです。」
「なるほど、それはわかる。しかし、資源の産出量が多いところは漢や私兵が数多く守っておるがその兵はどうする。」
「それはやはり、武将を育てることです。実力が見合わなければいくら兵を持たせたからといっても使いこなすことも出来ませぬから。実力が見合えば敵など恐れるに足りませぬ」
「なるほど、合理的で納得がいく。」
給仕が話を割って茶を差し出す。
「孔様、お茶をお持ちいたしました。」
「おぅ、これはすまぬ。」
「香麗殿、いただきまする。」
孔は一度口に茶を含んで味をみてから一杯目の茶を飲み干す。
「これは美味い。」
「気に入ってくれてよかった。」
「よければ、幾分か帰りに持たそう。」
「よろしいのですか?」
「よい、全部はやれぬが幾分か分けよう。」
「香麗殿、忝い」
「孔よ、先ほどの話の続きなのじゃが、魁の諸侯に定期的に教授してもらえぬか。なに、ただとは言わぬ。其方に定期的に黄山毛峰を与えよう。徐州では私が黄山毛峰の販売権を独占している。つまり、私からでなければ手に入らぬということだ。悪い話ではなかろう。」
「なるほど、それは魅力的な話です。しかし、私に講師など務まりましょうか?」
「妾は、お主において他におらぬと思っておる。良しなに頼む。」
「わかりました。お引き受けしましょう。」
「其方には迷惑を掛けるな。」
「いえいえ、そのようなことは」
「今宵は、思う存分楽しんでいかれよ。」
宴は深夜にまで行われ、諸葛均の終焉の挨拶で幕を閉じた。
翌朝には諸侯はそれぞれの領地へと戻った。